企業での導入が進むVR研修!その3つのメリットと5つのコンテンツパターン
VR(Virtual Reality:仮想現実)は、専用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を通して視覚と聴覚などの五感に刺激を与えることで、現実世界とは別の仮想空間にいるかのような状況を作り出します。ユーザーが動くことで視点が変わったり、ハンドコントローラーを使って何かを操作したりなど、インタラクション性も備えています。
そんなVRは教育・研修の分野と相性が良いとされ、この数年で企業内研修にVRを取り入れる事例が増えています。特に新型コロナウイルスの感染が拡大してからは、人・人の接触を減らしながら質の高い研修を実施する方法としてVRへの注目が集まっています。
VR×研修のメリット
それではまず、研修にVRを取り入れるメリットについて解説します。VR研修には様々な利点がありますが、以下の3つに大きく整理することができます。
1. 研修コストの削減
従来のリアルの形で研修を実施する場合、教える側と受講する側それぞれの時間(=人件費)や会場費が、研修を開催するたびに発生します。大企業になるほど、そのコストは積み重なっていきます。
これに対し、VRは一度制作すれば、HMD等の機材以外のコストは必要ありません。VRの制作自体には一定のコストがかかりますが、ずっと使える研修コンテンツであれば投資対効果は高いものになるでしょう。
また、工場や工事現場のような特殊な環境で研修を行ったり、事故や災害のような状況を研修のために再現するためには、その準備に相当な時間と費用が生じます。加えて、危険も伴います。その点、VRを使えば仮想空間の中にありとあらゆる状況を構築できるため、コストを抑えながら必要な研修を行うことができます。
2. 高い学習効果
学習は、能動的なアクティブラーニングと、受動的なパッシプラーニングに分類されますが、没入感が高くインタラクティブ性のあるVRはアクティブラーニングに当たるため、高い学習効果が期待されます。
例えば、安全衛生研修や危険回避のための研修においては、文章や映像を見るだけでは実感を持ちづらく、いざ現場に立ったときに研修内容が生かされないといった話も聞きますが、仮想空間の中で自分自身がその状況に身を置き具体的に体験することで、よりリアリティをもって習得できるでしょう。
3. 研修レベルの均質化
同じ研修プログラムだとしても、教える人間のスキルや経験値によって、その研修レベルには差が出てきてしまいます。グローバル企業においては、国や地域によってさらにその差は開いていくでしょう。
その点、全社で統一して使用するVRコンテンツを用意すれば、時期や地域などに左右されることなく、全受講者が同じレベルの研修を受けることができます。
もうひとつの視点として、VR研修であれば、受講者が必要なレベルに達していない場合に、いつでも何度でも繰り返し研修を受けられるというメリットもあります。追加の費用もかからず、受講者全員が必要なレベルへの到達を目指すことができるのです。
VR研修におすすめの5つのコンテンツパターン
続いて、VR研修でよく見られる5つのコンテンツパターンをご紹介します。自社のビジネス内容によって必要なコンテンツを用意することで、質の高いVR研修プログラムを構築できるでしょう。
シナリオ型コンテンツ
日常的によくある様々な対話シチュエーションにおいて、主人公の視点でストーリーを展開しながら、コミュニケーションやチームマネジメント、ホスピタリティなどのソフトスキルの向上を図るコンテンツです。
レンタルスペース事業を展開するYuinchuでは、レンタルスペース内見時の接客方法を学ぶ研修にVRを取り入れています。よくある質問への対応方法を学んだり、接客がお客様にどう見えているかをVR上で体験できます(参考)。
増田パートナーズ法律事務所は、コンプライアンス研修コンテンツを開発。コンプライアンスに触れるような場面に自分が遭遇した時にどう感じるか、をVR上でリアルに体験することで、その後の行動変容を促しています(参考)。
技術習得型コンテンツ
製品の組み立てや機械の操作、医療現場での施術方法などを学ぶために、仮想の作業現場に身を置き、ハンドコントローラー等を活用しながら様々な操作を疑似体験し、技術を習得していきます。
米KFCは、フライドチキンの作り方をVRで学べる研修コンテンツを用意しています。エンターテイメント性もあり、楽しく学べる工夫がされています。
最近では、新型コロナウイルス患者に対応する医療従事者に向けて、感染予防対策の細かな手順や、病室内のウイルスを”見える化”したVRコンテンツも開発されています。
安全訓練型コンテンツ
安全や衛生に関するプロトコルを疑似体験しながら習得できるコンテンツです。事故が発生してしまった場合の状況も、身を危険にさらすことなくリアルに体験できるため、安全への意識がより高まります。
東急建設では、建設現場で働く従業員が災害事故を疑似体験できるVRコンテンツを複数制作。その原因を考え、災害事故発生防止のために自らが取るべき行動を学習できる機会を提供しています(参考)。
凸版印刷では、VRと輪転機のローラーを連動させることで、巻き込み事故をよりリアルに体感できる研修コンテンツを活用しています。
職場体験型コンテンツ
新入社員などを対象に、職場の様子や各種オペレーションの流れなどを体験してもらうコンテンツです。実店舗などお客様がいる状態での研修が難しい環境でも、VRを使うことで現場に立つ前にリアルに近い予行演習が可能です。
スーパーマーケットチェーンのWalmartでは、買い物客が殺到するセール日の店内の状況をVRで事前に体験したり、店頭に新しく導入された機械の使い方をVRで事前学習することで、現場でのスムーズな対応を実現しています。
松屋フーズが導入している接客研修VRでは、声の大きさや各種動作を判定する機能も備えており、楽しみながらより実践に近い形で研修を受けることができる工夫がされています(参考)。
シミュレーション型コンテンツ
航空機や工事現場など特殊な環境において、非常事態が起こった場合の対処方法をVR上で学ぶことができるコンテンツです。危険を伴うような事態でも、VRであれば安全かつリアリティを持って体験することができます。
セコムは「煙が充満する中での避難誘導」「避難器具の体験シミュレーション」など、実際に行うには準備コストがかかる研修プログラムをVR化することで、効率的で質の高い研修を実現しています(参考)。
VRを活用して、有意義かつ効率的な研修を
企業にとって人材の育成は事業成長に欠かせない重要な取り組みです。しかしコロナ禍の今、大人数で集まったり、対面での密なコミュニケーションがとりづらい状況にあり、研修がままならないという課題を抱えている企業も多いことでしょう。
その点、VRを活用すれば、接触機会を大幅に減らしながらも、リアルよりもさらに充実した研修を実施することが可能です。
VR研修に関心はあったものの、導入には至っていないという人事担当者も、このような状況だからこそ本格的に検討してみてはいかがでしょうか?