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2020-05-28 11:07

動画広告のKPIはどのように決めるべきか――Google BrandLabが提案するKPIの設定から効果測定、最適化まで

動画広告市場は年々成長しています。テレビCMとは異なり、比較的低予算から出稿できるメディアも多いため、マーケティング施策の一つとして動画広告に取り組む企業も増えています。

しかし動画広告をただ配信するだけでは、動画広告のメリットを生かすことができません。適切に目的を設定し、効果検証を行い、効果をさらに高めるための最適化を図っていくことが重要です。

そこで今回は、主要な動画広告出稿先の一つであるYouTubeで動画広告キャンペーンを実施する際のKPIの種類と選び方、計測方法、キャンペーンの最適化について、「Google BrandLab」が提案しているTIPSを参考に、順を追って解説していきます。

目的に合ったKPIの設定、効果測定から最適化まで

動画広告キャンペーンを実施する際は、「広告接触を通して視聴者にどのようなアクション、態度変容を期待するか」というところからその目的を明確にすることが大切です。そこでまずは、どのようなキャンペーン目的が考えられるのかを見ていきましょう。

ステップ1 キャンペーンの目的を明確にする

従来のテレビCMでは、商品やブランドについて広く認知してもらうことが主な目的として活用されます。

オンライン動画広告でも認知目的のキャンペーンは多く見られますが、様々なセグメントでターゲティングできたり、尺(長さ)の自由度が高いことなどから、認知目的だけでなく、商品やサービス価値を訴求して購入検討につなげたり、購入や問い合わせなどの具体的な行動を促すことを目的とした広告キャンペーンも可能です。

そのため、計画している動画広告キャンペーンが「認知」「検討」「行動」のいずれを目的としているのか、最初に明確に、関係者全員で共通認識を持つことが重要です。これによって適切なKPIはもちろんのこと、クリエイティブなども大きく変わってきます。

ステップ2 キャンペーンの目的に合ったKPIを定める

目的が明確になったら、その達成のゴールラインとなるKPI(Key Performance Indicator, 重要業績評価指標)を設定します。KPIとは「認知」「検討」「行動」といった目的(KGI)の達成度を計るための中間的な定量的な指標のことです。

動画広告には、再生回数や視聴完了率、クリック数など、さまざまな計測項目や指標が存在します。しかし、測定できるすべての指標を見ていても、キャンペーンの本当の効果は把握できません。効果を知るためには、事前に仮説や目標を持ってキャンペーンを実施することが重要であり、そのためには複数の効果測定項目から、目的に合ったKPIを設定し、その指標を重点的に見ていく必要があります。キャンペーンの目的に適さないKPIを選択すると効果を正しく見ることができないため、KPIの設定は動画広告施策の中でもっとも肝心なステップと言えます。

下の図は、「認知」「検討」「行動」の3つの目的ごとに、YouTube動画広告において計測できる指標を分類したものです。

▼目的に合わせたKPIの設定

表-1https://www.thinkwithgoogle.com/articles/how-identify-right-kpis-online-video.htmlをもとに作成

YouTubeの動画広告では視聴回数や再生時間、クリック率といった定量的なデータだけでなく、認知度や好感度といった定性的な効果を数値化して把握できる「ブランドリフト効果」の測定もあり、さまざまな視点で動画広告のパフォーマンスを見ることができます。「ブランドリフト効果」は、アンケートなどを用いて、各計測項目における動画広告視聴者と非視聴者の数値を比較することで算出します。

以下でそれぞれの項目の意味を解説していますので、これらの中から目的に応じてどの測定項目をKPIとするのかを定めましょう。KPIは一つに絞る必要はなく、最重要KPI、サブKPIなど、複数のKPIを設定するのが一般的です。

認知

● インプレッション

動画広告が画面上に表示された回数。再生されているかどうかは問わない

● 視聴回数

動画広告をユーザーが視聴または再生した回数

※YouTube動画広告の種類によって、視聴回数のカウント方法は異なる

● ユニーク視聴者数

動画を視聴した人数。同じデバイスから2度再生されてもユニーク視聴者数は1人とカウントされる

【ブランドリフト効果】

● ブランド認知度の向上

動画広告がブランド認知度の向上につながったかを、非視聴者の認知度との比較から測定。どの属性グループが一番ブランドを認知したかも分かる[測定方法:アンケート]

● 広告想起率の向上

関連ワードから動画広告を思い浮かべるかをアンケートにより測定。異なるクリエイティブで比較し、どの広告がもっとも覚えられているのかを知ることもできる[測定方法:アンケート]

検討

● 視聴完了率

「広告の表示回数(=インプレッション)」のうち「完了まで、または 30 秒以上再生された回数」の割合

● 再生時間

動画の総再生時間

【ブランドリフト効果】

● ブランド好意度の向上

動画広告によりブランドに対する好意度に変化が見られたかを、非視聴者との比較から測定。企業ブランディング、商品ポジショニングの定点観測ができる[測定方法:アンケート]

● 比較検討の向上

広告メッセージがブランドや商品の比較検討を促せたかを非視聴者との比較から測定[測定方法:アンケート]

●ブランド関心度の向上

GoogleとYouTubeにおいて指定したキーワードのオーガニック検索数が、動画広告配信前後で変化したかを測定。広告の内容がユーザーの興味・関心を引き、検索を促せたかが分かる[測定方法:サーチリフト]

行動

● クリック数/率

動画広告をクリックされた回数/率

● 問い合わせ件数

動画広告配信後の商品やサービスに関する問い合わせ件数

● 会員登録数

動画広告配信後の会員登録数

● 売上

動画広告配信後の売上

【ブランドリフト効果】

● 購入意向の向上

実際に買ったかどうかに関わらず、購入意向の変化を、動画広告の非視聴者との比較から測定[測定方法:アンケート]

ステップ3 KPIに合わせて、アナリティクスツールやサービスを選択する

キャンペーンの目的に合わせてKPIを設定し、動画広告の配信がスタートしたら、各種ツールやサービスを活用し実際に効果測定を行っていきます。

YouTube 動画広告の効果測定には、YouTubeアナリティクス、Googleアナリティクス、AdWordsのレポート機能、そしてブランドリフト調査を使うことができます。

動画再生時間や視聴率、クリック数などリアルタイムで実測できる項目はYouTubeアナリティクス、Googleアナリティクス、AdWordsでチェックできます。これらのツールで得られる数値データについては、キャンペーン開始時からの推移を見たり、前回キャンペーンと比較することで、効果や課題が見えてきます。

一方、ブランドリフト調査では、リアルタイムの反応ではなく、動画広告の視聴が結果的にどのような態度変容を引き起こしたかを知ることができます。現在はセルフサーブ型ではなく、一定規模以上の出稿がある企業にのみ提供されています。

ほかにも、Googleが提供している企業向けの市場調査サービス「Google Consumer Surveys」(有料)を使って独自アンケートを実施し、ブランドや商品・サービスに関する意識調査を行うこともできます。Google Consumer Surveysは、Googleを通じてオンラインサイト上で任意のアンケートを配信するもので、ユーザーはアンケートに回答することによって閲覧サイトの詳細や記事の内容を見られるという仕組みになっています。ブランドリフトのアンケートとは異なり、特定の広告キャンペーンにひもづいたアンケートの配信はできませんが、年齢、性別、地域などのターゲティング設定ができるため、ターゲティング層への広告の影響度合いをアンケートから把握できます。

▼それぞれのツールで測定することができる項目

表-2https://www.thinkwithgoogle.com/articles/how-identify-right-kpis-online-video.htmlをもとに作成

ステップ4 モニタリングと見直しによって最適化を図る

動画広告のパフォーマンスを測る際、業界や競合他社などのベンチマークと比較してしまいがちですが、他社との比較は、キャンペーンの成果を判断する最適な手段とは言えません。

なぜなら、キャンペーンによって目的、KPI、ターゲティング、リーチ獲得にかける投下予算などが異なり、動画の尺やBGM、企業ロゴの表記、有名人の起用などのクリエイティブ要素も動画広告のパフォーマンスを左右するため、同一条件のもとで比較ができないからです。

効果検証においては、あくまで自社の基準を設定して効果改善を行っていくことをおすすめします。測定結果を前回のキャンペーンと比較をしたり、A/Bテストを実施して、動画のクリエイティブやターゲティング、投下予算を調整しながらキャンペーンを最適化していきましょう。

キャンペーンを実施する上で気をつけたい3つのポイント

最後に、動画広告キャンペーンを成功に導くための3つのポイントをご紹介します。

1. 社内外のチームやパートナー代理店とキャンペーンの目的、KPIを企画段階から共有する

キャンペーンの目的、KPIをもとにクリエイティブの内容、ターゲティング、広告出稿方法を決めていくことが重要になるため、キャンペーンに関わる人たちの間で共有し、同じ目線で施策を考えることが大切です。

2. KPIとする測定項目を安易に変えない

4つのステップでも紹介したように、KPIを指針として効果の改善をすることが重要です。もしなかなか成果が見られなくても、KPIを変えるのではなくクリエイティブや配信方法の見直しによって改善を図ります。また、例えばKPIを「比較検討」という態度変容に設定している施策で、予想以上に動画の再生数が伸びたからと言ってそれで満足するのではなく、あくまでKPIを見ることが重要です。

3. こまめにアナリティクスをチェックする

アナリティクスをチェックする日や時間を決め、日々の変化を把握していきましょう。定期的に記録をしていくことで、KPIに設定した項目において高い効果が出ている動画広告の配信を拡大し、パフォーマンスの低い動画広告を停止させるといった最適化を図れるようになり、費用対効果の向上も期待できます。

hr

今回ご紹介したKPI設定方法はYouTubeに限らず、動画広告の成果を知る上で基本となる考え方です。動画プラットフォームや各種ソーシャルメディアで計測できる効果測定項目を知り、キャンペーンの目的に合わせてKPIを設定しましょう。継続的な測定と、効果改善のためにPDCAのサイクルを繰り返すことが動画マーケティング施策の効果を高める一番の近道になります。

LOCUSでは、動画広告の目的に沿ったクリエイティブ企画のご提案・制作はもちろんのこと、マーケティング目的に応じた動画広告キャンペーン全体の設計もご支援しております。ぜひお気軽にご相談ください。

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