前回の記事では、無料(一部有料)で使える各種動画プラットフォームで設置可能なCTAの種類をご紹介しました。
後編の今回は、CTA機能が充実している有料の動画配信プラットフォームを使い、目的に応じてカスタマイズを行う場合にどのようなCTAが有効なのかを、動画配信プラットフォームを提供するWistia社が公開しているデータを元に考えていきます。
なお、今回ご紹介するTIPSは、ウェブページに動画とCTAを設置する場合などにも応用できますので、ぜひ参考にしてみてください。
CVRがもっとも高い表示タイミングとは?
動画の中にCTAを置く場合、考えられるタイミングは「動画の前」「動画の途中」「動画の最後」の3通りです。
まずはCTAのタイミングごとのメリット、デメリットをまとめてみます。
場所 | メリット | デメリット |
動画の前 |
動画を再生する前に必ずCTAを目にすることになるため、一定の興味を持っていればクリックされる可能性がある。 |
動画視聴前ではCTAをクリックする意義が分からないため、スキップされたり、最悪の場合、動画自体を視聴されないケースも考えられる。 |
動画の途中 |
動画のストーリー構成に合わせ、もっともCVを獲得しやすいタイミングでCTAを表示することができる。 |
視聴者が動画に入り込んでいる状態であるとも言えるため、その最中にCTAを表示することで、視聴体験を低下させる可能性もある。 |
動画の最後 |
動画を完全視聴したということは、相当に関心が高まっている状態であり、高いCVRが期待できる。 |
どれだけ魅力的な動画であっても動画の最後まで完全視聴する人は一定数減るため、CTAを目にする人も絶対的に少なくなる。 |
以上を踏まえた上で、Wistiaが公開したデータを見て見ましょう。
下の円グラフの通り、同社の動画プラットフォームを介して配信された動画の95.9%が「動画の最後」にCTAを設置していました。動画視聴を妨げることなく、CV(コンバージョン)の可能性が高い視聴完了者だけにCTAを表示する、というのが多くの企業の考えなのでしょう。
しかし、CTAの表示タイミングごとのCVR(コンバージョン率)を比較したのが下のグラフで、「動画の途中(Middle)」がもっともCVRが高くなっています。
「動画の途中」はその範囲が広いため、さまざまな要因により総じて高くなっているとも考えられます。しかし、視聴者は今すぐ動画の続きを見たいと考えている状態であるため、考える隙を与えずに確実にアクションを起こさせることが比較的容易なタイミングであることは間違いないでしょう。
また、例えば新しいウェブサービスを紹介する動画であれば、最後まで視聴しなくても、動画の途中に無料トライアルへのリンクを貼ることは、視聴者にとっても有益と考えられ、必ずしも最後に設置するのがベストとは言い切れないことが分かります。
以上のように、設置タイミングのメリット・デメリットを理解した上で、その動画の目的やコンバージョンの内容によって、最適なタイミングを検討することが大切だと言えそうです。
CTAに使う言葉は何がベスト?
CTAをどこに配置するかに加え、どのような言葉を使うかも、クリック率を左右する大きな要因です。Wistiaが分析したところ、効果の高いCTAには「パワーワード」や「アクションワード」が使われているケースが多いことが分かっています。
4つのパワーワード
CTAに限らず、広告メッセージとしてもよく使われる、訴求力の高い単語がパワーワードです。今回は以下の4つのパワーワードを取り上げます。
ワード | 特徴 |
You(あなた) |
「あなた」と問いかけることで視聴者が自分だけに語りかけられていると感じるため、エンゲージメントの向上が期待できる。 |
Free(無料) |
「無料」という条件は意思決定のハードルを下げる効果がある。 |
Now(今) |
人は何か価値を受け取るなら早いほうがよく、待たされることを好む人は少ない。そのため「今」「今すぐ」といった表現に対して脳が無意識に反応する。 |
New(新しい) |
脳は新しさを求めており、それによって興味をかき立てられ、さらに学ぼうとする性質がある。 |
この4つのパワーワードを使ったCTAのCVRを比較したのが次のグラフです。
いずれのパワーワードもCVRが高めであることが分かりますが、中でも「Free(無料)」というワードが12.22%という高いCVRを記録しています。
商品やサービス、あるいはホワイトペーパーなどを無償で提供しているのであれば、「無料」であることをCTAで強調し、より多くのリード情報の獲得を狙うとよいでしょう。
ただし少し注意も必要です。というのも、無料であることで気軽にクリックやフォーム入力する人が増えるため、リードの質が下がる可能性も考えられます。
6つのアクションワード
続いてアクションワードについてです。そもそもCTAは何かしらの「行動」を促すものであり、起こして欲しい行動を言葉で示したほうがその意図が的確に伝わります。アクションワードの代表的なものとしては、以下の6つが挙げられます。
- Click(クリックする)
- Download(ダウンロードする)
- Register(登録する)
- Signup(サインアップする)
- Buy(購入する)
- Try(試す)
下のグラフは、アクションワードを含まないCTAと比較して、6つのアクションワードを使った場合のCVRの差を示したものです。
「Buy(購入する)」を除き、アクションワードを含めたほうが、含めない場合よりもCVRが高いことが分かります。そしてその中でも「Signup(サインアップする)」がもっとも効果的な表現であることが明らかです。
代表的なアクションワードである「Click(クリックする)」のCVRは、他のすべてのCTAの平均よりもおよそ2%高いとのことですが、アクションワードの中では4番目のCVRです。これは、「クリックする」よりも「ダウンロードする」「登録する」など、より具体的な行動を示す言葉の方が、視聴者自身がクリックする目的をより明確に理解し、その先に起こることを具体的にイメージできるためだと推測されます。
なお、今回ご紹介したのはあくまで英語を使ったCVRの比較であるため、日本語にそのまま当てはまるとは限りません。しかし、より具体的なアクションを示した方がよい点などは、日本語におけるCTAにも応用できそうです。
また何より、CTAの言葉ひとつによってCVRが大きく変わる可能性があることは明らかです。ABテストなどを通してより効果的な言葉を見極めることが重要であると言えるでしょう。
CTAはコンバージョンを獲得するためのものですが、視聴者の立場に立ち、視聴者にとって便利で有益なオプションを提供できているか、という点を常に意識することがポイントとなります。CTAは既存の動画にも設置することはできますが、理想としては、動画の企画段階からCTAの目的や配置を考えておきたいものです。
また優れたCTAは、優れた動画においてのみ、その効果を発揮します。どれだけ魅力的なCTAを設計しても、動画そのものが視聴者を引きつけるものでなければ、クリックされる可能性は低いことは覚えておきましょう。