
企業YouTubeの炎上対策:原因・予防策・初動について解説
企業のマーケティング活動において、YouTube活用はもはやスタンダードな手法となりました。しかし、動画コンテンツの影響力が拡大する一方で、予期せぬ「炎上」によって企業のブランドイメージが一瞬にして崩れ去るリスクも増大しています。
本記事では、近年の炎上事例や傾向を基に、企業YouTubeが炎上するメカニズムと、絶対に避けるべきトピックの共通点、そして万が一の事態に備えた初動対応について体系的に解説します。
目次[非表示]
企業YouTubeはなぜ炎上しやすいのか?
まずは、企業YouTubeにおける炎上の現状と、その背景にあるメカニズムを正しく理解することが重要です。
炎上事案と最も関連性が高いのは「動画」
近年のネット炎上において、動画コンテンツは最大のリスク要因となっています。
動画がSNSやネット上で拡散されるスピードは非常に速いため、知名度を押し上げることができる一方で、不適切な表現が含まれると炎上に発展するリスクがあります。
テキストや静止画と比較して、動画は視覚・聴覚に直接訴えかけるため、視聴者の感情を揺さぶりやすく、ネガティブな感情も増幅されやすい傾向にあります。
例えば、テキストであれば文脈で補完できる内容でも、動画内の出演者の些細な表情や口調、背景に映り込んだ小物が「不快だ」と捉えられ、瞬く間に拡散されるケースが後を絶ちません。企業担当者は、「動画は炎上リスクが最も高い媒体である」という認識を強く持つ必要があります。
YouTubeからX(旧Twitter)、まとめサイトへ拡散される仕組み
また、YouTubeでの炎上は、プラットフォーム内だけで 完結しない点が最大の特徴であり注意しなければならない点です。
炎上の火種は、YouTubeのコメント欄から始まり、拡散力の高いX(旧Twitter)へと飛び火し、最終的にまとめサイトやネットニュースで取り上げられることで「大炎上」へと発展します。
具体的には、YouTubeのコメント欄で批判的な意見が増加し始めると、そのスクリーンショットや動画の切り抜きがXに投稿されます。Xではリポスト機能によって批判が加速度的に拡散され、普段YouTubeを見ない層にまで情報が届きます。その後、Webメディアが「〇〇社の動画が炎上中」と記事化することで、事態は社会的な問題として認知されるに至ります。
YouTubeというプラットフォーム内で完結しないため、自体の把握にも時間がかかり
一度炎上すると取り返しのつかない事象を巻き起こすこともあるという点に注意が必要です。
炎上リスク:企業が失う 4つの資産
炎上が発生した際、企業が被る損害は計り知れません。ここでは、企業が失う主要な4つの資産について解説します。
1. 世間からのマイナスイメージと信頼失墜
最も直接的な被害は、長年積み上げてきたブランドイメージの毀損です。
一度「炎上した企業」というレッテルが貼られると、そのネガティブなイメージを払拭するには多大な時間とコストを要します。特に、コンプライアンス意識の欠如や倫理観の欠落が原因であった場合、顧客からの信頼は地に落ち、回復は困難を極めます。
2. 取引停止・株価への影響
BtoB企業であっても、炎上の影響は対岸の火事ではありません。
取引先企業は、コンプライアンスリスクを抱える企業との取引を敬遠する傾向にあります。炎上の規模によっては、既存の取引停止や新規契約の破談、さらには株価の下落といった財務的なダメージに直結する可能性があります。
3. 採用活動への深刻なダメージ
炎上は、人材採用の現場にも深刻な影を落とします。
就職活動中の学生や求職者は、必ずと言っていいほど応募企業のWeb上の評判を検索します。検索結果の上位に炎上に関連する記事が表示されれば、応募の抑制や内定辞退が相次ぐことは避けられません。「あのような動画を公開する企業の社員になりたくない」という心理が働くのは当然の結果です。
4. 「デジタルタトゥー」としての過去の掘り起こし
インターネット上に公開された情報は、完全に削除することが極めて困難です。
一度炎上すると、その事実は「デジタルタトゥー」としてネット上に半永久的に残り続けます。数年後に再び話題になったり、新たな不祥事が発生した際に「過去にも炎上した企業」として蒸し返されたりするリスク(掘り起こし)を負い続けることになります。
炎上が起きやすいトピックの傾向(さしすせそ)
では、具体的にどのような内容が炎上を招くのでしょうか。ここでは、「一般社団法人SNSエキスパート協会」が提唱する、炎上しやすい5つのトピックを整理した「炎上さしすせそ」を紹介します。
さ:災害・差別
災害時の不適切な発信や、特定の属性に対する差別的な表現は、即座に致命的な炎上を引き起こします。
具体的なNG事例:
大型台風や地震の発生直後に、予約投稿の設定を解除し忘れ、「今日も元気にお店でお待ちしています!」といった平常時の販促動画を公開してしまう。
社内のエンタメ企画として、外国籍の社員に特定の食品を食べさせ、そのリアクションを嘲笑するような動画を公開する。
これらは「不謹慎」「人権意識の欠如」として激しい批判を浴びます。災害時は予約投稿を停止するフローを確立し、差別的表現については国際的な感覚を持ったチェック体制が不可欠です。
し:思想・宗教
個人の信条に関わる思想や宗教的なトピックは、企業アカウントで扱うべきではありません。
具体的なNG事例:
商品紹介動画の背景セットとして、特定の宗教における神聖なシンボルや仏像などを、単なる「おしゃれなインテリア」としてぞんざいに扱う。
特定の思想信条を肯定、あるいは否定するような文脈で語る。
悪気がなかったとしても、信仰を持つ人々にとっては「冒涜」と捉えられます。グローバル展開している企業であれば、なおさら文化的な背景への配慮が求められます。
す:スパム・スポーツ・スキャンダル
過度な宣伝行為や、熱狂的なファンを持つスポーツ、スキャンダラスな話題への安易な言及は避けるべきです。
具体的なNG事例:
- 地元のスポーツチームを応援するあまり、対戦相手チームを揶揄したり、「〇〇チームは弱い」と煽ったりする発言を行う。
- 話題性を狙い、不祥事で活動自粛中のインフルエンサーや、過去に重大な迷惑行為で炎上した人物をゲストに起用する。
対戦相手のファンもまた、自社の潜在顧客である可能性があります。「敵を作る」発言は百害あって一利なしです。また、一時の話題性だけを意識したような、スキャンダルに関わった人物の起用は、企業のコンプライアンス姿勢そのものを問われます。
せ:政治・セクシャル
政治的なスタンスの表明や、ジェンダーに関する固定観念の押し付けは、現代において最も炎上しやすいトピックの一つです。
具体的なNG事例:
- 経営陣が出演する動画で、自社の事業とは無関係な特定の政党や政治家の政策について、激しい口調で批判または支持を展開する。
- 便利な家電を紹介するドラマ風動画で、家事に追われているのは「母親」だけで、「父親」はソファでくつろいでいる描写をする。
特にジェンダーに関する表現は、「性別役割分担の押し付け」として批判が集中しやすいポイントです。「家事は女性がするもの」といった無意識のバイアスが企画に含まれていないか、厳重な確認が必要です。
そ:操作ミス
ヒューマンエラーによる誤操作も、企業の信頼を損なう要因となります。
具体的なNG事例:
- 担当者がプライベートアカウントだと思って、別のYouTubeの動画にコメントをしたら、
誤って公式アカウントで企業としてはふさわしくないようなコメントをしてしまった。
いわゆる「誤爆」です。内容が他社への誹謗中傷であった場合、取り返しがつかない事態となります。端末の使い分けや、投稿前のダブルチェックを徹底することで防げるミスです。
近年特に炎上につながりやすい「3つの地雷」
「さしすせそ」のトピックに加え、発信者の「態度」や「情報の質」に関わる3つの要素も、近年の炎上トレンドとして無視できません。
1. 虚偽(人々を誤解させる)
不正確な情報や誤解を招く表現は、視聴者に不利益をもたらすため厳しく糾弾されます。
事実と異なる効能を謳ったり、データの出典を明記せずに断定的な表現を用いたりすることは、「人々を誤解させ、誰かに誤情報を広めさせる」行為です。不快に感じた視聴者からの指摘によって炎上に繋がり、景品表示法などの法的問題に発展するケースもあります。
2. 否定(建設的でない攻撃)
特定の対象を否定することで自社を持ち上げようとする手法は、現代の視聴者には受け入れられません。
競合他社や特定のコミュニティに対する建設的でない発言、あるいは攻撃的な発言は、議論を激化させます。各コミュニティ内の対立を煽る結果となり、その火の粉が自社に降りかかることになります。
3. 非礼(礼儀を欠いた行動)
「面白ければ何をしてもいい」という態度は、大きな反発を招きます。
動画の企画として、公共の場での迷惑行為や、出演者・スタッフに対する礼儀を欠いた行動(いじめに見える言動など)は、見た人に強い不快感を与えます。法人としての品格を疑われ、ネガティブな意見が拡散されるきっかけとなります。
炎上を起こさないための「予防策」と運用体制
炎上リスクをゼロにすることは不可能ですが、適切な予防策を講じることでリスクを最小限に抑えることは可能です。
運用の大前提:ガイドライン等のマニュアル策定
SNS運用を開始する前に、明確なガイドライン(ソーシャルメディアポリシー)を策定することが必須です。
投稿して良い内容、避けるべきトピック、緊急時の連絡体制などを文書化し、運用に関わる全てのスタッフに周知徹底してください。個人の判断に委ねるのではなく、組織としての基準を設けることがリスク管理の第一歩です。
チェック体制:年齢・性別など異なる「複数人」で確認
動画のチェックは、必ず属性の異なる複数人で行うことを推奨します。
特定の世代や性別だけで構成されたチームでは、価値観の偏り(バイアス)に気づくことができません。例えば、男性だけのチームでは気づかなかったジェンダー表現の問題点も、女性スタッフの視点が入ることで発見できる場合があります。「おじさん構文」や「若者の暴走」を相互に防ぐためにも、多様な視点を取り入れることが重要です。

チェックフロー:投稿前に「複数回」のフェーズを入れる
確認のタイミングを複数回設けることで、ミスの流出を防ぎます。
- 企画段階: そもそもこの企画にリスクはないか
- 編集完了後: 映像表現やテロップ、BGMに問題はないか
- 投稿直前: タイトル、概要欄のテキスト、設定に不備はないか
- 投稿直後: 公開後に問題が発生していないか
各フェーズで厳格なチェックを行うフローを構築してください。

外部の目:第三者視点を入れる重要性
社内だけのチェックには限界があります。外部パートナーによる客観的な視点を取り入れることが極めて重要です。
社内の常識が世間の非常識になっているケースは少なくありません。「外部の人が見たらどう感じるか」「嫌な気持ちになる人はいないか」という客観的な視点で監査を行うことで、炎上の芽を事前に摘み取ることができます。
万が一炎上してしまったら?担当者が持つべき「3つの心構え」
どれほど対策を講じても、炎上が発生する可能性は残ります。
もし炎上してしまった際、被害を拡大させないための3つの心構えを解説します。
1. 冷静に把握する
まずはパニックにならず、状況を冷静に把握することに努めてください。
「どこで(YouTubeコメ欄か、Xか)」「誰が(インフルエンサーか、一般層か)」「何に対して(動画全体か、一部の発言か)」批判しているのかを正確に分析します。事実関係を確認しないまま感情的に反応することは避けてください。
2. 削除を急がない
焦って動画を削除することは、必ずしも正解ではありません。
説明なしに動画を削除・非公開にすると、「証拠隠滅を図った」「逃げた」と捉えられ、火に油を注ぐ結果となります。いわゆる「サイレント削除」は、企業の不誠実さを露呈する行為としてさらなる批判を招きます。まずは状況を保存し、対応方針が決まるまでは慎重に行動すべきです。
3. 方針を話し合う
個人の判断で謝罪や反論を行わず、必ず組織としての方針を話し合ってください。
「静観すべきか」「謝罪文を出すべきか」「動画を削除すべきか」の判断は、炎上の規模や内容によって異なります。広報部門や法務部門、場合によっては経営層を交えて対策会議を行い、一貫性のあるメッセージを発信することが信頼回復への最短ルートです。
まとめ:企業YouTubeは「複数の視点」というフィルターで守る
企業YouTubeの炎上対策において最も重要なのは、「個人の感覚に依存しない」ことです。どのようなトピックにリスクが潜んでいるかを正しく理解し、ガイドラインというルールを設け、属性の異なる複数人の目を通すことで、炎上リスクは劇的に低減します。企業YouTubeは、攻めのマーケティングツールであると同時に、守りのリスクマネジメントが求められる場でもあります。
「自社のチェック体制に不安がある」「ガイドラインをどう作ればいいか分からない」というお悩みがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
LOCUSのYouTubeコンサルティングサービスでは、貴社の運用方針に合わせたマニュアルの策定や、炎上リスクを低減するための運用体制構築、担当者向け研修などをトータルでサポートいたします。外部パートナーとしての客観的な視点からのチェック機能を果たし、安全かつ効果的なYouTube運用を実現します。
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監修者
渡邊 友浩(株式会社LOCUS 事業推進グループ チーフ)
2017年、動画制作・動画マーケティング支援を行うLOCUSに入社。営業としてBtoB/BtoC問わず累計80社以上の動画活用を支援。現在は事業推進グループとして、宣伝会議やデジタルハリウッドSTUDIOをはじめ、企業・団体向けセミナーで多数登壇。現場で培った経験をもとに、企業のYouTube活用やブランディング動画など、動画マーケティングの戦略立案と実践的な活用ノウハウを発信し続けている。





