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YouTubeの著作権はどこまでOK?動画制作・配信の際に知っておくべき著作権法を徹底解説

企業のYouTube運用を担当されている方から、次のような相談をよくいただきます。

  • 街中でロケ撮影したら、背景に他社のロゴや看板が映り込んでしまった。これは公開して大丈夫?
  • 動画のBGMにフリー素材を使いたいが、本当に無料で使っていいのか不安
  • 競合他社の製品紹介動画を「比較動画」として一部引用したいが、どこまで許されるのか
  • 制作会社に発注した動画を、社内で編集し直したらクレームが入った
  • ある日突然、自社動画に「Content IDの申し立て」が届いた。どう対応すべきか


競合他社が次々と動画を展開するなか、著作権への不安から動画施策に踏み切れずにいる──そんなご相談も少なくありません。本記事では、企業のYouTube運用でつまずきやすいポイントを、日本の著作権法とYouTubeの規約の両面から整理します。

目次[非表示]

  1. 1.権利の基本とYouTube独自のルール
  2. 2.セーフかアウトか、著作権の境界線
  3. 3.著作権トラブルを回避する仕組みづくり
  4. 4.YouTube著作権運用に関するよくある質問
  5. 5.まとめ
  6. 6.YouTubeチャンネル運用のお悩みはございませんか?

権利の基本とYouTube独自のルール

日本の著作権法とYouTube規約、両方を守る必要がある理由

動画を公開するうえでまず押さえておきたいのが、日本の著作権法とYouTubeの規約は別々に存在しており、その両方を守る必要があるという点です。どちらか一方さえクリアしていれば大丈夫、という思い込みは、企業として致命的なミスにつながりかねません。

日本の著作権法は創作物に対する権利を保護する国内法で、違反すると民事上の損害賠償請求のほか、刑事罰(最大10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金)が科される可能性があります。一方、YouTubeの規約はプラットフォーム独自のルールで、違反するとチャンネルの停止や収益化の停止といったペナルティを受けます。気をつけたいのは、著作権法上は問題なくても、YouTube規約には抵触してしまうケースがあるという点です。

たとえばコミュニティガイドラインがその代表例です。YouTubeは著作権法とは別に、プラットフォームの健全性を保つための独自基準を設けています。また、フェアユース(公正利用)は米国著作権法の概念であり、日本の著作権法における引用とは要件が異なります。日本企業が「フェアユースだから問題ない」と安易に判断すると、国内法では引用の条件を満たさず、結果的に著作権侵害となる可能性があるため注意が必要です。

加えて、Content IDという自動検知システムにも気をつけてください。これは、権利者が登録した音声や映像のデータベースと自動で照合し、一致するコンテンツを検出する仕組みです。法的には問題のない使い方であっても、Content IDに検出されると収益化が停止されたり、動画が非公開になったりすることがあります。法律面とプラットフォーム面、両方のリスクを意識した運用体制を整えておきましょう。

動画制作で見落としがちな著作隣接権とは

著作権を理解するうえで、もう一つ押さえておきたい概念が著作隣接権です。著作者ではないものの、著作物の制作・流通において重要な役割を担った人や事業者に認められる権利で、動画制作の実務に直結します。著作隣接権が発生する主な対象は、次の3者です。

① 実演家(出演者・演奏家など)

動画に出演した俳優・ナレーター・ミュージシャンなどは、自身の実演に対して録音・録画・放送・配信を許諾する権利を持っています。外部の出演者を起用するときに「撮影費を支払ったから自由に使える」とは限りません。出演契約書のなかで、使用できる媒体・期間・二次利用の可否を明確に取り決めておきましょう。

② レコード製作者

楽曲を最初に音源として収録した事業者に発生する権利です。JASRACが管理する楽曲を使うときは、作詞・作曲家の著作権だけでなく、音源(原盤)の著作隣接権も別途処理が必要なケースがあります。「JASRACへの使用料は払ったのに、原盤権の許諾を取っていなかった」というトラブルは、実際に頻繁に発生しています。

③ 放送事業者

テレビ局などが放送した番組コンテンツには、放送事業者の著作隣接権が存在します。ニュース映像や放送番組のワンシーンを自社YouTube動画に引用・転載する行為は、著作権と著作隣接権の両方を侵害するおそれがあるため、特に注意が必要です。

【ポイント】 著作権だけクリアすれば問題ない、という認識が盲点になりやすい領域です。素材や出演者が絡む権利処理では、著作権と著作隣接権の両面から確認する習慣をつけましょう。

企業が守るべき著作者人格権というブランドリスク

企業の担当者が見落としがちなのが、著作者人格権という権利の存在です。たとえ使用許諾を得ていても、この権利を侵害すると訴訟リスクが発生し、企業ブランドに深刻なダメージを与えるおそれがあります。

著作者人格権には、大きく分けて3つの権利が含まれます。

  • 公表権:著作物を公表するかどうかを決める権利
  • 氏名表示権:著作者名を表示するかどうか、どのように表示するかを決める権利
  • 同一性保持権:著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利


企業のYouTube運用で特に問題になりやすいのが、同一性保持権です。たとえば、外部のクリエイターに発注した動画を社内判断で大幅に編集し直した場合、同一性保持権の侵害となる可能性があります。お金を払って発注したのだから自由に使ってよい、というのは誤った認識であり、契約書には著作者人格権の不行使条項を明記しておいてください。

他社の制作物を引用するときにも注意が必要です。引用の範囲内であっても、元の著作物を批判的な文脈で使ったり、明らかに作者の意図と異なる解釈を加えたりすると、著作者人格権の侵害として問題視される可能性があります。企業活動においては取引先や業界関係者との信頼関係が重要なので、法的には白でもグレーな使い方は避けましょう。

財産権の侵害は金銭的な解決が可能ですが、著作者人格権の侵害では謝罪広告の掲載を求められることもあります。企業のYouTubeチャンネルがそのような事態に陥れば、ブランドイメージへの影響は計り知れません。権利処理は使用許諾を得れば終わりではなく、著作者人格権への配慮も含めた包括的なリスク管理が求められます。

動画制作・配信で外せない3つのチェックポイント

ここまで著作権の基本を解説してきましたが、実務において特に意識すべきポイントは次の3点に集約されます。制作会社への発注時や、自社運用のガイドラインを作成するときの参考にしてください。

  1. 著作権の所在と譲渡条件を確認する:原則として著作権は制作者に帰属します。制作会社に依頼する場合は、著作権が貴社に譲渡されるのか、それとも利用許諾の形をとるのかを契約書で明確にすることが、トラブル回避の第一歩です。
  2. 二次利用の範囲(期間・媒体)を明確にする:YouTube用に制作した動画を、あとからテレビCMや展示会で流用する場合は、追加の利用料が発生するケースがあります。あとからのトラブルを防ぐため、配信期間や使用媒体の制限があるか事前に合意しておきましょう。
  3. 権利処理の責任分担を定義する:出演者の肖像権やBGMの著作権など、動画に含まれる各種素材の権利処理を、制作会社と貴社のどちらが行うのかを明確にします。特に社外の素材を多用する場合、責任分担の曖昧さが法的リスクに直結します。


こうしたポイントをあらかじめ押さえておくと、法的トラブルを未然に防ぎ、スムーズに動画を活用できます。それでは次に、具体的にどのようなケースが著作権侵害のリスクを孕んでいるのか、実際の境界線を見ていきましょう。


セーフかアウトか、著作権の境界線

著作権の基本を理解したところで、次に気になるのが「実際にどこまで許されるのか」という具体的な境界線です。企業のYouTube運用では、引用や素材使用のルールを正確に把握しておくことが、コンテンツの幅を広げながらリスクを回避することにつながります。実務で頻繁に直面する判断基準を詳しく解説します。

引用が適法と判断されるための要件

引用は著作権法第32条で認められた例外規定ですが、単に出典を記載すれば良いわけではありません。裁判例や条文の趣旨から、複数の要件を総合的に考慮して適法性が判断されるため、企業のYouTube動画では、それぞれの要件を実務レベルでどのようにクリアすべきかを理解しておく必要があります。

適法な引用の判断で重視される主な条件は、次のとおりです。

  • 公表された著作物であること:未公開の資料や内部文書は引用の対象になりません
  • 引用の必然性があること:自分の主張を補強するために、その著作物を使う必要性が認められること
  • 主従関係が明確であること:自分のコンテンツが主で、引用部分が従である関係性
  • 引用部分が明確に区別されていること:どこからどこまでが引用かが視覚的・聴覚的に明らかであること
  • 出典が明示されていること:著作者名、作品名、出典元などを適切に表示すること


これらは個別に判断されるのではなく、総合的に考慮されます。一つの要件が弱くても、全体として「公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内」と認められれば適法となる場合もありますが、複数の要件を満たしていないと違法と判断されるリスクが高まります。

YouTube動画で特に難しいのが、主従関係の明確化です。たとえば、他社の製品紹介動画を10秒引用し、自社の解説を30秒加えた場合、時間的には主従関係が成立しているように見えます。しかし、視聴者の注目が引用部分に集中するような構成になっていれば、実質的に主従が逆転していると判断されるおそれがあります。

実務上のベストプラクティスは、引用部分を画面の一部に縮小表示し、自社のナレーションや解説を主軸に据える手法です。また、引用の前後に「このデータによると」「○○社の調査では」といった導入・締めの言葉を入れると、引用であることを視聴者に明示できます。

音声の引用にも注意が必要です。BGMや効果音として他者の楽曲を使う行為は、引用の必然性を満たさないため、原則として著作権侵害となります。歌ってみたや弾いてみた動画で楽曲を使う場合は、JASRACやNexToneといった著作権管理団体への許諾確認、もしくはYouTubeの包括契約の範囲内かどうかの確認が必要です。

意外と見落としがちな画像とフォントの落とし穴

YouTubeにおける著作権の話題では音楽や映像クリップが注目されがちですが、企業の動画運用で意外と見落としがちなのが画像素材とフォントに関する権利処理です。「社内資料で使っていた画像をそのまま動画に流用した」「プレゼン資料のフォントをそのまま動画テロップに使った」といったケースが、思わぬ権利侵害につながることがあります。

画像素材については、次のような誤解が頻繁に見られます。

  • 「Google画像検索で見つけた画像は自由に使える」:これは完全な誤りで、検索結果に表示される画像にも著作権は存在します
  • 「出典を書けば使える」:出典表示は引用の条件の一つに過ぎず、他の要件を満たさなければ違法です
  • 「古い画像は著作権が切れている」:著作権の保護期間は著作者の死後70年であり、企業ロゴや製品写真は現役で保護されています


フォントについても、利用範囲によっては別途ライセンスが必要となるケースがあります。PCに搭載されているフォントの多くは、画面表示や動画への利用は通常のライセンス範囲内で認められていますが、フォントファイル自体の再配布や、動画ファイルへの埋め込み・サブセット化、ロゴデザインへの組み込みなど、特定の用途には別途許諾が必要となる場合があります。特に有料フォントや特殊なフォントを使う場合は、利用規約を必ず事前に確認してください。

安全な運用のためには、次のような対策を講じておくと安心です。

  • 素材の調達ルールを明文化する:使用可能な素材サイトをリスト化し、それ以外からの調達を禁止する
  • 商用利用可能なフォントライブラリを整備する:Google FontsやAdobe Fontsなど、ライセンスが明確なサービスを活用する
  • 素材の使用履歴を記録する:どの動画でどの素材を使ったかを台帳で管理し、問い合わせに対応できるようにする

写り込みと屋外撮影の権利ルール

オフィス外での取材撮影やロケ動画で、背景にポスター・キャラクター・企業ロゴ・店舗看板などが映り込むケースは珍しくありません。こうした意図せぬ写り込みは、著作権法上どのように扱われるのでしょうか。ここでは、混同されがちな2つの制度を分けて整理します。

ロケ撮影などでの「写り込み」(著作権法第30条の2)

街中でのロケ撮影などで、背景に他社のロゴや看板、ポスターなどが意図せず入り込むケースは、著作権法第30条の2(付随対象著作物の利用)で扱われます。令和2年の改正で対象範囲が拡大され、主たる被写体に付随して入り込んだ著作物が軽微な構成部分にとどまり、利用の目的・態様などに照らして正当な範囲内で、著作権者の利益を不当に害しない場合には、許諾なく利用できる場合があります。

たとえば、オフィスのエントランスを撮影したときに、壁のポスターが遠景に小さく映り込む程度であれば、原則として問題ありません。一方、次のようなケースは「軽微な構成部分」とはいえず、注意が必要です。

  • キャラクターや著作物が画面の中心に大きく映っており、視聴者の注目を集めている
  • 商業施設のロゴや特定ブランドが明らかに意図的にフィーチャーされている
  • 音楽が環境音として流れ込んでいるケース(録り込みの目的・態様によっては判断がより複雑になります)

屋外に設置された建築・美術の撮影(著作権法第46条)

写り込みとは別の制度として、屋外に恒常的に設置された建造物(ビル・電波塔・橋梁など)や銅像などの美術・建築の著作物は、著作権法第46条により一定の範囲で自由に撮影・利用できます。ただし、次のようなケースは例外となり、別途許諾が必要となる場合があります。

  • 販売を目的とした複製を行う場合
  • 同じく恒常的に設置するための複製(同種のものを別の場所に建てるなど)を行う場合
  • 著作者の利益を不当に害するような営利利用にあたる場合
  • 屋内に展示された美術品や、一時的な照明・装飾物を撮影対象とする場合

商業的な映像制作で、特定の建造物や観光スポットを主役として意図的に使う場合は、事前に施設所有者へ確認・許諾取得を行ってください。

【実務上のポイント】 写り込みが避けられないと判断される場合でも、念のため撮影プランの段階で著作物が映り込まない構図を検討しておく姿勢が、企業としてのリスク管理につながります。


著作権トラブルを回避する仕組みづくり

著作権の知識を持っていても、実際の運用でミスが起きれば意味がありません。企業のYouTubeチャンネル運営において重要なのは、個人の注意力に頼るのではなく、組織としてトラブルを防ぐ仕組みを構築することです。素材選定の基準からトラブル発生時の対応まで、実践的なフレームワークを紹介します。

フリー素材=安全という誤解とライセンス選定基準

「フリー素材」という言葉は、「著作権フリー」を意味しません。この誤解が、多くの企業で著作権トラブルの原因となっています。フリー素材サイトには様々なライセンス形態が混在しているため、利用条件を正確に理解しないと、意図せず権利侵害を犯してしまうリスクがあります。

代表的なライセンス形態と、YouTube動画での使用可否を整理します。

ライセンスの種類

商用利用

YouTube使用

クレジット表記

注意点

CC0(パブリックドメイン)

不要

最も自由度が高い

CC BY(表示)

必要

クレジット表記が必須

CC BY-NC(非営利)

不可

要確認

必要

収益化チャンネルでの使用は原則不可

CC BY-ND(改変禁止)

要確認

必要

編集・加工が制限される

ロイヤリティフリー

契約次第

契約次第

契約次第

利用規約の精読が必須


特に注意したいのが、ロイヤリティフリーの解釈です。ロイヤリティフリーは「使用料が発生しない」という意味であって、「著作権が放棄されている」という意味ではありません。多くのロイヤリティフリー素材は、初回購入時に料金が発生し、その後の使用では追加料金が不要という形態です。また、使用範囲に制限がある場合も多く、「SNS投稿は可だがYouTubeは別途ライセンスが必要」といった条件が設定されているケースもあります。

【実務編】プロが推奨する素材サイトとトラブルを防ぐ表記ルール

実務で動画を制作・配信する際、権利関係をクリアにするためにも、以下の実績あるサイトの活用をおすすめします。「著作権表記不要」とされているサイトであっても、運営方針が突然変更となる可能性に備え、念のため概要欄に利用元を記載しておくと、組織としてのリスク管理につながります。

推奨BGM・音楽素材サイト

  • YouTubeオーディオライブラリー:YouTubeが提供する公式のロイヤリティフリー素材です。ただしトラックごとにクレジット表記の要否やライセンスタイプ(Creative Commonsライセンスが付与された楽曲もあります)が異なるため、使用前に必ず各楽曲のライセンス条件を確認し、なるべく著作権表記が不要な楽曲を選定してください
  • DOVA-SYNDROME:著作権表記不要で利用でき、多くのYouTuberにも利用されている定番サイトです
  • 魔王魂:著作権表記は必須ですが、YouTubeで自由に使用できます
  • HURT RECORD:著作権表記不要で利用可能なBGMサイトです

推奨効果音サイト

  • 効果音ラボ:利用率が非常に高く、著作権表記不要で高品質な効果音を入手できます
  • 無料効果音(小森平氏):効果音専門のサイトで、著作権表記は不要です

概要欄への記載テンプレート

サイト側の規定で記載不要と書かれている場合でも、不測の事態を防ぐため、概要欄には必ず【利用したサイト名】と【URL】を記載してください。なお、個別のBGM名は記載しなくても問題ありません。

【素材提供・楽曲提供元】

フリーBGM DOVA-SYNDROME(http://dova-s.jp/
魔王魂(https://maoudamashii.jokersounds.com/

AI生成コンテンツの注意点

画像生成AIや音楽生成AIで作成したコンテンツは、学習データに著作物が含まれている可能性があり、著作権上のリスクが完全には解消されていません。また、YouTubeでは、視聴者に誤解を与える可能性のある合成・改変コンテンツに対して、ラベル表示の機能が提供されています。一律のラベル義務ではないものの、他者の顔や声をリアルに合成したコンテンツや、視聴者に実際の出来事と誤認させるような映像については、適切な開示が求められます。これを怠るとガイドライン違反として削除や収益化制限の対象となる場合があるため、関連ポリシーの動向には継続的に注意しておきましょう。

企業としての素材選定基準(優先順位)

  1. 自社制作素材:最も安全。撮影・制作コストはかかるが、権利関係がクリア
  2. 有料ストックサービス(拡張ライセンス):Shutterstock、Adobe Stockなどで、YouTube使用を明示した拡張ライセンスを取得
  3. CC0ライセンス素材:Unsplash、Pixabayなど。ただし、肖像権や商標権は別途確認が必要

Content ID申し立てを受けたときの対応手順

Content IDによる申し立ては、必ずしも著作権侵害を意味しません。しかし対応を誤ると事態が深刻化し、著作権侵害の警告(通称:ストライク)が付いたり、チャンネル全体に影響が及んだりするおそれがあります。申し立てを受けたときの初動を理解しておくことが、企業のYouTube運用には欠かせません。

Content ID申し立てには、主に3つの種類があります。

  • 収益化の申し立て:動画の収益が権利者に配分される
  • 視聴制限:特定の国や地域で動画が視聴できなくなる
  • 動画のブロック:動画全体が視聴不能になる


申し立てを受けた場合、YouTube Studioのチェック機能で詳細を確認できます。まず行うべきは、申し立ての内容が正当かどうかの検証です。自社が正当に権利を保有している素材や、適法な引用に対して誤検知が発生することは珍しくありません。


正当な使用であると判断した場合は、異議申し立てを行えます。異議申し立てでは、次の選択肢があります。

  • ライセンスの証明:素材の購入証明や使用許諾書を提示する
  • 引用の主張:適法な引用であることを説明する
  • パブリックドメインの主張:著作権の保護期間が終了していることを説明する


異議申し立て(dispute)を行うと、権利者は30日以内に対応を決定します。なお、初回の異議申し立てが却下された後にさらに不服を申し立てる「アピール(appeal)」段階では、2022年7月以降の制度変更により、権利者の応答期間が7日に短縮されています。権利者が申し立てを取り下げれば解決しますが、権利者が著作権侵害の削除依頼(DMCA通知)を行った場合は、著作権侵害の警告が付くおそれがあります。この警告は3回累積するとチャンネルが停止されるため、異議申し立ては慎重に判断してください。

企業としての推奨対応は、次のとおりです。

  1. 72時間以内に状況を把握する:申し立ての内容、対象素材、影響範囲を確認
  2. 使用素材の権利関係を再確認する:購入履歴、ライセンス条件、契約書を確認
  3. 不明な場合は専門家に相談する:著作権に詳しい弁護士や、動画制作会社の法務担当に相談
  4. 記録を残す:申し立ての内容と対応履歴を記録し、再発防止に活用


【注意】 最も避けたいのは、とりあえず異議申し立てを出すという安易な対応です。正当性がない状態で異議申し立てを行い、その後にDMCA通知を受けると、企業としての信頼性にも影響します。迷ったときは、該当素材を削除または差し替えて動画を再公開するという選択肢も検討してみてください。

YouTubeに動画を投稿するとはどういうことか

著作権管理において、企業の担当者が見落としがちなのが、動画を各プラットフォームに投稿する行為そのものが持つ法的な意味です。

YouTubeをはじめとする主要プラットフォームの利用規約では、動画をアップロードした時点で、プラットフォーム側に対して「使用・複製・改変・配信・二次利用などを行うための、全世界を対象とした非独占的ライセンスを提供したものとみなす」と定められています。著作権自体はアップロードした企業に帰属しますが、プラットフォームがその動画をプロモーション素材として活用したり、異なる形式に変換して配信したりすることは、規約上認められた範囲内となります。

実務上、特に注意したいケースが2つあります。

① 制作会社から著作権を譲渡されていない状態でのアップロード

著作権が制作会社に帰属したままYouTubeに投稿すると、プラットフォームへのライセンス提供の主体が不明確になります。制作会社との契約で著作権の帰属または利用許諾の範囲を明確にしてからアップロードしましょう。


② 出演者・素材のライセンスが「YouTube配信限定」の場合

出演者の肖像権や使用BGMが特定プラットフォーム限定でライセンスされているケースがあります。プラットフォームへのアップロードによって自動的に付与されるライセンスが、こうした個別の制限を超えることはありません。動画を複数媒体で展開する計画があるなら、最初から全媒体を想定した権利処理を行ってください。


【推奨】 YouTubeVimeo・各種SNSなど、利用するプラットフォームによって規約の内容は異なります。新しいプラットフォームへの展開を検討するときは、利用規約を事前に確認する習慣を組織のルールとして定めておきましょう。

YouTube著作権運用に関するよくある質問

著作権法やYouTubeの規約を理解していても、実際の現場では判断に迷うケースが多々あります。企業の担当者様から寄せられることの多い実務的な疑問について、リスク管理と成果最大化の両面からお答えします。

Q1. 生成AIで作成した画像や音楽をYouTube動画に使用する場合、著作権上のリスクはありますか?

A. 2026年現在の法整備状況では、生成AIコンテンツの使用には権利の不透明性というリスクが伴うため、慎重な対応が必要です。

AIの学習データに他者の著作物が含まれている場合、生成されたコンテンツが意図せず既存の著作物と酷似し、権利侵害を指摘される可能性があるためです。また、YouTubeでは、視聴者に誤解を与える可能性のある合成・改変コンテンツについてラベル表示の機能が提供されており、特に他者の顔や声をリアルに合成したコンテンツや、実際の出来事と誤認させるような映像については適切な開示が求められます。誠実な運用を怠ると、ガイドライン違反として削除や収益化制限の対象となる場合があります。


実務上の対策としては、次の3点を徹底してください。

  1. 商用利用可能なAIツールの選定:Adobe Fireflyなど、権利関係がクリーンな学習データのみを使用しているツールを選ぶ
  2. YouTubeのラベル表示機能の活用:合成・改変したコンテンツについては、適切に開示してプラットフォーム側の信頼を維持する
  3. 最終的な目視確認:生成されたものが既存の著名なキャラクターやロゴに酷似していないか、必ず人間が検品する

Q2. 制作会社に「著作権譲渡」を含む契約で依頼すれば、どのような用途にも自由に流用して良いのでしょうか?

A. 著作権(財産権)が譲渡されていても、著作者人格権や二次利用の範囲に関する契約条項には引き続き注意が必要です。

著作権の譲渡はあくまで「財産としての権利」の移動であり、著作者人格権(同一性保持権など)は制作者側に残り続けます。そのため、納品された動画を大幅に改変して別媒体で配信する場合、事前の契約で「著作者人格権を行使しない」という特約がない限り、法的なトラブルに発展する恐れがあります。

また、出演者の肖像権や使用されているBGMのライセンスが「YouTube配信限定」となっているケースも少なくありません。YouTube用に制作した動画をテレビCMや展示会、タクシー広告などへ流用するときは、必ず事前に次の点を確認してください。

  • 契約書に「著作者人格権の不行使」が明記されているか
  • 素材(出演者・音楽・フォント)のライセンス範囲が媒体を超えて有効か
  • 二次利用にあたって追加の許諾料(トラッキング料など)が発生しないか

Q3. 過去にアップロードした自社動画に著作権侵害の疑いがある場合、どのように対処すべきでしょうか?

A. 侵害の可能性を認知した時点で即座に非公開または削除を行い、権利関係を精査するコンプライアンス・オーディット(監査)を実施してください。


放置することのリスクは、単なる動画の削除に留まりません。権利者からの正式な申し立てにより著作権侵害の警告(通称:ストライク)が付くと、チャンネル全体の機能が制限され、最悪の場合は企業のアカウントごと削除される可能性があります。これは、これまで積み上げてきた動画資産と登録者を一瞬で失うことを意味します。

特に数年前の動画は、当時の権利意識や古いライセンス基準で制作されていることが多いため、次の手順でクリーンアップを進めてください。

  1. 全動画の素材再点検:特にBGM、ストックフォト、フォントのライセンスが現在も有効か確認する
  2. Content IDの警告履歴を確認YouTube Studioで過去の申し立て履歴を精査し、グレーなものは差し替える
  3. 最新のガイドラインに基づく再公開:必要に応じて現在の基準に合わせた編集(BGMの入れ替えなど)を行い、再アップロードする



まとめ

YouTubeにおける著作権の「どこまで」という問いに対する答えは、日本の著作権法とYouTubeの規約の両方を理解したうえで、組織的なリスク管理体制を構築することにあります。本記事で解説したポイントを改めて整理します。

  • 法律と規約、両方を意識する:著作権法とYouTube規約は別物であり、どちらも守る必要がある
  • 著作隣接権も忘れずに確認する:出演者・音源・放送素材には著作権とは別の権利が存在する
  • 著作者人格権にも配慮する:使用許諾を得ても、同一性保持権の侵害には注意が必要
  • 引用の要件を総合的に理解する:出典表示だけでは適法な引用にならない
  • 写り込みの許容範囲を把握する:軽微な構成部分かつ正当な範囲内の写り込みが適法の前提(第30条の2)
  • 素材・フォントの権利処理を徹底する:フリー素材=安全という誤解を捨てる
  • プラットフォームへのライセンス提供を理解する:投稿行為そのものが法的な意味を持つ
  • Content ID対応のフローを整備する:初動を誤らないための社内体制を整える


著作権対策は、一見するとコンテンツ制作のブレーキのように感じるかもしれません。しかし、適切な知識と体制が整っていれば、むしろ安心して表現の幅を広げられるアクセルとなります。競合他社が著作権リスクを恐れて消極的になっている今こそ、正しい知識を武器に積極的なYouTube活用を進める好機です。

とはいえ、いざ自社のチャンネルに向き合うと、どこから手を付ければよいか迷われる場面も多いかもしれません。そうしたときは、専門家の知見を借りるのも有効な選択肢です。


YouTubeチャンネル運用のお悩みはございませんか?

自社のYouTubeチャンネルについて、こんなお悩みはありませんか?

  • 既存動画の著作権リスクを一度棚卸ししたい
  • これから動画施策を本格的に立ち上げたい
  • 運用ガイドラインを整備したいが、どこから手を付ければよいかわからない


LOCUSでは、累計2,000社を超える動画制作実績をもとに、企画段階での権利設計から、過去動画のライセンス確認、運用体制の整備まで、御社のチャンネル状況に合わせた診断・アドバイスを無料で承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。


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監修者
渡邊 友浩(株式会社LOCUS 事業推進グループ チーフ)

2017年、動画制作・動画マーケティング支援を行うLOCUSに入社。営業としてBtoB/BtoC問わず累計80社以上の動画活用を支援。現在は事業推進グループとして、宣伝会議デジタルハリウッドSTUDIOをはじめ、企業・団体向けセミナーで多数登壇。現場で培った経験をもとに、企業のYouTube活用やブランディング動画など、動画マーケティングの戦略立案と実践的な活用ノウハウを発信し続けている。

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